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もっさりシナリオブログ

もけの脚本・シナリオ等創作置き場(無断転載不可)

魔法の鉛筆@万年筆

人物

山本和重(38)会社員

山本聖子(35)主婦・和重の妻

山本一樹(5)和重の息子

山本道代(70)和重の母

山本茂雄(78)故人・和重の父

 

○山本家・仏壇(夕方)

   山本茂雄(78)の遺影が置いてある。その前に置いてある万年筆を掴んで

   山本一樹(5)が走り去る。

 

○同・茂雄の部屋

   一樹が原稿用紙に何か書いている。側には万年筆用のインク。

 

○同・リビング

   山本道代(70)と山本聖子(35)が洗濯物をたたんでいる。

聖子「一樹、お義父さんが亡くなってからずっと何か書いてますね」

道代「ふふふ、おじいちゃんの机、気に入ったのかしらね」

聖子「あの万年筆もお義父さんが最期に一樹にくれたものだって、

 何度も仏壇から持ってちゃうんですよ」

道代「あの人、あの万年筆をずっと大事にしてたのよ。

 でも一樹くんが持つにはちょっと難しいかもね」

聖子「…そうですね」

   道代と聖子、深いため息をつく。

和重の声「ただいま」

聖子「あら、あなた?」

   聖子、立ち上がり玄関まで行く。

 

○同・玄関

   山本和重(38)が靴を脱いでいる。

聖子「おかえりなさい。今日は早いのね」

和重「ちょっと一樹が気になってたから今日は早く帰って来た」

聖子「仕事は大丈夫なの?」

和重「大丈夫だよ」

 

○同・茂雄の部屋

   一樹、相変わらず何かを書いている。和重、背後から声をかける。

和重「一樹、何書いてるんだ?」

一樹「おじいちゃんにたくさん手紙を書いてるんだ。

 ねえ、お父さん天国にはどうやって手紙を送ればいいの?」

和重「うーん…あ、お父さんも手紙書こうかな」

一樹「うん、じゃあこの魔法の鉛筆で書くといいよ」

   一樹、万年筆を和重に渡す。

和重「魔法の鉛筆?」

一樹「そうだよ。おじいちゃんが言ってたんだ。

 魔法の鉛筆は大事にしていればずっと使えるんだって。永遠に使えるんだよ」

   和重、万年筆をじっと見る。

一樹「永遠に使えるって事はこれで書けば天国でも手紙、読めるんだよね?」

和重「…一樹…」

一樹「でも不思議なんだ。魔法の鉛筆はインクにつけて書くんだけど、

 またすぐインクにつけないと書けなくなるんだよ。本当に天国でも読めるのかな?」

和重「インクはすぐになくなるけど万年筆そのものは永遠に使えるか…

 なんだか人の一生みたいだな」

   一樹、首をかしげる。

和重「インク、つまり人の命はすぐ終わるけど、万年筆そのものはなくならない。

 その人の思い出はなくならないって感じかな?」

一樹「よくわかんないよ」

和重「お父さんにもよくわからんよ。じゃあ二人でおじいちゃんに手紙書こうか」

一樹「僕はもうたくさん書いたよ。はい、お父さん読んでみる?」

   一樹が得意げにたくさんの絵が描いてある原稿用紙を渡す。

   和重、突然涙があふれる。

一樹「どうしたの、お父さん?」

   涙でインクがにじみ、絵がぼやける。

一樹「あ、魔法の鉛筆って水にも弱いんだね」

和重「ああ、そうだった…そうだったよな。

 一樹ごめんな。もう一回書いてくれるか?」

   一樹、うなずき万年筆を手に取る。夕日が二人の影を映し出す。