もっさりシナリオブログ

もけの脚本・シナリオ等創作置き場(無断転載不可)

甘党部長@おじさん

人物

新谷健人(25)会社員

加藤征司(48)会社員・部長

増田亮一(35)会社員・主任

ウエイター

 

 

○ファミレス・入口

   ドアのカランカランという音。

   笑顔の加藤征司(48)を先頭に作り笑いを浮かべた増田亮一(35)と

   無表情の新谷健人(25)が入って来る。

ウエイター「いらっしゃいませ。何名様ですか?」

加藤「三名です。あ、席は禁煙ね」

ウエイター「ではこちらへどうぞ」

 

○同・禁煙席の一角

   通された席の奥に加藤、隣に増田が座る。加藤の正面に新谷が座る。

ウエイター「ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」

   ウエイター立ち去る。

加藤「さあ、何食べようか?」

増田「そうですねえ…あ、新谷くん、メニュー取って」

新谷「(無愛想に)はい」

増田「部長、これなんてどうですか?ピリ辛ハンバーグ!

 ハンバーグに唐辛子が入ってるそうですよ!」

加藤「えーボク辛いの苦手だなあ。そんなにおなかすいてないし、

 今日はバナナチョコレートパフェとミルクレープにしようかな」

増田「ええー甘い物だけですか?」

加藤「だって好きなんだもん。家じゃ食べさせてもらえないしさ」

新谷「(小声で)チッ、この甘党部長」

加藤「ん?新谷くんもパフェ食べる?」

新谷「いえ、私は結構です」

増田「じゃあ私はピリ辛ハンバーグにしますね。新谷くんは?」

新谷「同じでいいです」

   新谷の携帯電話が鳴る。

新谷「あ、ちょっと失礼します」

   新谷、加藤と増田がウエイターを呼び、楽しそうに注文しているのを

   にらみつつ、移動して電話を取る。

 

○同・ドリンクバー付近

新谷「はい、新谷です…はい、お世話になっております。ええ、はい、え?

 確認致します。あの、ちょっとお待ちいただけますか?」

   新谷、慌てて席に戻る。

 

○同・禁煙席の一角

   鞄から資料を取り出して確認する新谷。

新谷「…あ、今確認しました。確かにおっしゃる通り見積書の金額の

 桁がはるかに多いですね。…申し訳ありません。うちのミス…いえ私のミスです。

 申し訳ありません。え…ちょっと待って下さい。からかってなんていませんよ。

 確かにそうですが、でも…いえ大変申し訳ありませんでした…」

   いつの間にか電話を切られている事に気づき、呆然とする新谷。

増田「どうかしたのか?」

新谷「…部長、主任、申し訳ありません。私のミスでこれから伺う先方の山下さんを

 怒らせてしまいました」

増田「新谷くんのミス?何をやってるんだ君は!」

   ウエイターがパフェを持ってくる。

ウエイター「お待たせ致しました。バナナチョコレートパフェのお客様」

加藤「あ、ボクね。じゃあお先にいただきます。いやーパフェ久しぶりだよ。

 美味しそうだなあ」

増田「(いらいらしながら)部長パフェ食べてる場合じゃないですよ」

加藤「ん、どうして?」

新谷「だから私がミスしたせいで先方を怒らせてしまったので…」

増田「新谷くんどうするんだ!君のミスだぞ!」

加藤「いや、それは違うな」

新谷「え?」

加藤「きちんと確認しなかったボクの責任だよ。新谷くん一人で抱え込まないで。

 会社は君一人が回しているんじゃないからね」

新谷「あ…」

加藤「先方の山下さんには今すぐボクが電話で謝るよ。大丈夫、あの人すごく

 短気だけど話せばわかってくれるから」

増田「いやー部長、助かります。新谷くん、今後気をつけるんだよ」

新谷「はい、あの、部長…ありがとうございます」

加藤「(携帯電話を取り出しつつ)いいよいいよ気にしないで」

   加藤、ふと目の前の少し溶けたパフェを見つめる。

加藤「電話はパフェ食べてからでいいよね?溶けちゃうから」

新谷「(くすりと笑って)やっぱり甘党部長」

加藤「ん?何?」

新谷「いえ、何でも…何でもありませんよ。部長」

   新谷、にっこりと笑う。