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もっさりシナリオブログ

もけの脚本・シナリオ等創作置き場(無断転載不可)

九年後の僕へ@一年間

人物

相沢晴孝(12)→(13)小学生→中学生

近藤千晶(12)→(13)小学生→中学生

太田聡(12)→(13)小学生→中学生

木下竜也(12)→(13)小学生→中学生

相沢孝子(48)主婦・相沢の母

 

 

○野原の一本杉の下(朝)

   木の下で相沢晴孝(12)が食べかけのクッキーを見つめている。

   太田聡(12)が相沢の前にクッキーの缶を差し出す。

太田「晴孝、もっとクッキー食うか?」

相沢「じゃあそのチョコのやつを・・・」

太田「はい、毎度!」

   太田が缶からチョコレートのクッキーを取り出す。

   少し遠くに木下竜也(12)近藤千晶(12)がおり二人で何か話している。

太田「お二人さーん、仲いいのはいいけどクッキーまだあるぞー」

木下「まだあるの?俺ももうちょっと食べたいな」

千晶「私も!チョコがいいな」

太田「(クッキーを渡して)チョコ大人気だな。晴孝もチョコがいいってさ」

千晶「だってチョコクッキーって美味しいもん。ね、相沢くん!」

相沢「う、うんそうだね」

木下「この缶丈夫そうだな。捨てるのもったいないし、

 何かに使えるんじゃないかな?」

太田「うーん、じゃあ・・・」

 

○野原の一本杉の下
   相沢が「十年後の自分へ 元気ですか?近藤さんとはその後、

   どうなっていますか?・・・」などと書いてある手紙を黙読している。

   しばらくして手紙を封筒にしまう相沢。

   太田がスコップを持って相沢の側に駆け寄る。

太田「おい晴孝、早くしろよ。もう穴も掘り終えたし、

 先にタイムカプセル埋めちゃうぞ」

相沢「わ、びっくりした」

   慌てて手紙を隠す相沢。

太田「(笑いながら)なんだよ、読まねえよ今は。十年後は読ませてくれよ」

相沢「やだよ」

   木下と千晶が手紙を持ってやってくる。

   千晶の手紙は束になっている。

太田「二人とも手紙書いた?じゃあこの缶の中に入れてね」

   太田、木下にクッキーの缶を渡す。

木下「入れたよ」

太田「おう!木下も十年後に読ませてくれよ。って近藤の手紙はやけに多いな!」

千晶「えっと、十年後の自分とそれから十年後のここにいるみんなに

 それぞれ手紙書いてみたんだ。だめだった?」

太田「いや、ダメじゃないけど・・・入るかな?」

相沢「・・・入るよ。入れよう」

   相沢が千晶の手から手紙の束をそっと受け取る。

千晶「(笑顔で)ありがとう、相沢くん」

相沢「あ、いや、うん」

   千晶の手紙を缶に入れる相沢。太田が缶にふたをする。

太田「よし、ふたしたぞ」

   木下、掘っていた穴に缶を置く。

木下「じゃあ埋めるよ」

太田「また十年後に掘り起こしてやるからな」

   木下、タイムカプセルに土をかぶせる。

 

○野原近くの道(夕方)
   鼻歌を歌いながら千晶が前を歩いている。

   遅れて相沢、太田、木下が並んで歩いている。太田が軽く伸びをする。

太田「あーあ、もうすぐ卒業式だな」

木下「そういや相沢って私立の中学校行くんだっけ?」

相沢「あ、うん、そうだよ」

木下「寂しくなるな」

太田「晴孝、新しく友達出来ても俺らの事忘れるなよ!」

相沢「そんなに簡単に忘れらんねえよ(千晶の後ろ姿を見ながら小声で)

 ・・・忘れないよ」

 

○私立丘の上男子中学校・校門(朝)

   入学式という大きな立て看板が出ている。

   校門の側の桜の花が満開になっている。相沢、校門をくぐる。

   相沢孝子(48)が相沢の後ろから声をかける。

孝子「晴孝、お勉強今まで以上に頑張るのよ」

   相沢、黙ってうなずく。

 

○相沢の部屋
   どこかでセミの鳴き声がしている。

   相沢、机に向かって歴史の参考書に書き込みながら首をかしげる。

   そばには夏期講習テスト予定表が置いてある。

   ポケットの携帯電話が鳴り、手に取る。

   太田からのメールで「久しぶり!今暇?みんなで遊ぼうぜ」と書いてあり、

   スクロールすると太田を中心に、木下、千晶が笑顔で写っている写真が

   添付されている。相沢じっと写真を見つめる。

   手短に返信をすませてから携帯電話をポケットに入れ再び教科書を手にする。

 

○街の中
   太田、木下、千晶がアイスクリームを食べている。

太田「返信来た。晴孝、夏期講習のテスト勉強中だって!」

千晶「・・・そっか、残念だね」

太田「卒業してから全然会えねえなあ」

木下「勉強か、俺たちも勉強頑張らないとな」

太田「はいはい、(アイスを持ち直して)これ食べてからね!」

   一同、笑う。

 

○私立丘の上男子中学校・掲示板前
   窓の外で木々の葉がはらはらと落ちている。
   掲示板には期末テスト学年順位が張り出されており、

   1位から順番に順位が書かれている。真ん中の方に「相沢晴孝 21位」

   という文字を見つける相沢。がっくりと肩を落とす。

   携帯電話を取り出し、千晶に「会いたい」とメールを打つがすぐに消して

   携帯電話をしまう。ふと、窓の外の空を見上げる。

 

○道(夕方)
   雪が降っている。手袋をしながら英単語帳をめくっている相沢。

   吐く息が白い。ふと足を止めて、遠くからかすかに見える杉の木を見る。

相沢「聡・・・木下・・・元気かな・・・近藤さんも・・・」

 

○相沢の部屋(夜)
   机にノートを広げたまま突っ伏す相沢。かなり落ち込んでいる。

   足下に塾の資料が散乱している。

   その中の紙に「志望校合格率50%」の文字。

   ふいにドアをドンドンとたたく音がする。
孝子の声「晴孝、もっと勉強頑張らなきゃ!

 中一でもこの成績じゃ志望校に落ちちゃうわよ!」

相沢「(少し怒鳴って)わかってるよ!」

   しぶしぶ英単語帳を広げる相沢。「time」の文字が先頭に来ている。

   ふとノートに「タイムカプセル」と書く。

   机の上のカレンダーを確認する相沢。

相沢「・・・明日でちょうど一年か」

   相沢ふと思いつきルーズリーフに「九年後の僕へ」と書く。

   続き「僕は明日、近藤さんに告白しようと思います。

   その後、僕はどうなりますか?」とどんどん書き進める。

 

○野原の一本杉の下
   相沢がスコップで杉の木の下を掘っている。

   近くには千晶が心配そうに見ている。

千晶「相沢くん、どうしてタイムカプセル掘り起こすの?」

相沢「(土を掘り起こしながら)どうしても追加したい手紙があるんだ。

 今日の決意のためにも必要だし」

千晶「そうなんだ、でもちょうどいいや。私もあの中に捨てたい手紙があったから」

相沢「捨てたい手紙?」

   カツーンとスコップが何かにぶつかる音。

   タイムカプセルの缶の角が顔をのぞかせている。

千晶「十年後の木下くん宛てに書いた手紙にね、「好きです」なんて

 書いちゃったんだ。馬鹿だよね。木下くん今、彼女いるのに」

   千晶、タイムカプセルを掘り起こし、自分の手紙を確認する。

千晶「あ、これ。あったあった」

   千晶、手紙に少し目を通し、破り捨てようとする。

相沢「ちょっと待って」

千晶「え?」

相沢「僕も追加して手紙入れようかと思ったけどやっぱりやめるよ」

千晶「え、でも決意がどうとかって・・・」

相沢「いや、やっぱりタイムカプセルはそのままにしておいた方が

 いいなって思ってさ」

千晶「でも・・・恥ずかしいし」

相沢「これはこのままの方がいいんだよ。

 僕もあの時、恥ずかしい事いっぱい書いたし」

千晶「・・・わかった、手紙このまま入れておくよ」

   千晶、手紙をタイムカプセルに戻す。

   相沢タイムカプセルを元の場所に置く。

相沢「(タイムカプセルに向かって)じゃあ、また九年後に!」

   相沢、タイムカプセルに土をかぶせる。