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もっさりシナリオブログ

もけの脚本・シナリオ等創作置き場(無断転載不可)

駅の落とし物@ハンカチ

人物

大西一成(25)駅員

柴田亮(31)駅員・大西の先輩

小林俊三(88)無職

本田由紀子(23)会社員

田中朋子(72)無職・狭山の母

狭山明(41)会社員

 

 

○山野中駅・待合室(朝)

   柴田亮(31)が待合室で掃除をしている。

   真ん中に置いてある古びた石油ストーブにぼんやりとあたっている

   小林俊三(88)その横で大西一成(25)が落とし物箱をチェックしている。

   落とし物箱には古びた文庫本や折りたたみ傘などが入っている。

大西「(つぶやく)落とし物多いなあ」

   小林が落とし物箱を覗きこみ、文庫本を手に取る。タイトルは蟹工船

小林「あ、これわしの」

柴田「(掃除を続けながら)小林さんのじゃないでしょ」

小林「なんでわかるんだ?」

柴田「んーなんとなく」

   小林気を取り直して

小林「じゃあ、落とし主が見つからなかったらわしにちょうだい」

大西「困りますよ小林さん」

小林「作者が小林なんだよ?」

大西「それでもだめです」

小林「ちぇ」

   小林本を戻してストーブの前に戻る。

柴田「しかし落とし物箱、最初はいいアイデアだと思ったけど誰も見ないな」

大西「小学校の時も誰も引き取り手がいなくて結局ゴミが入ってたりしてましたよね。

 みんな落とし物に興味がないのかな?」

   と、本田由紀子(23)が待合室に入ってくる。

   由紀子、落とし物箱の中をチェックする。

   大西と目が合うが足早に改札を通って行ってしまう。

柴田「あの人は落とし物に興味あるみたいだな」

大西「そ、そうみたいですね」

小林「一瞬わしを見た。どうやらわしに興味があるようだな」

柴田「それはないだろ」

明子の声「あの…すみません」

   一同声の方へ振り向くと着物を着た田中明子(72)が

   ハンカチを持ってやって来る。

明子「すみません、落とし物を拾ったんですけど…」

   大西ハンカチを受け取る。

大西「ありがとうございます。お預かりしますね」

明子「はい、では失礼します」

   明子ゆっくりと改札を通っていく。

柴田「落とし物増えたな」

小林「あの人も一瞬わしを見たぞ」

柴田「それはもういいから。その落とし物どんなの?」

柴田「ハンカチですね。柄はえーっと…」

   大西、ハンカチを広げてみる。

   壁画の様な雰囲気のマンモスとそれを狩る人間達のどう考えてもおかしな

   デザインのハンカチ。

柴田「マンモスか」

大西「そうですね」

小林「マンモスを狩る人もおるな」

大西「そうですね」

柴田「なんか…変わったハンカチだな」

大西「と、とりあえずこのハンカチも落とし物箱に入れておきましょう。

 持ち主が現れるといいですね」

   大西、ハンカチを落とし物箱に入れる。

 

○同・待合室(夜)

   落とし物箱に張り紙をしている大西。

   そこへ由紀子が改札から出てきて、大西の元にやって来る。

大西「はい、あの…何か?」

由紀子「落とし物箱…」

大西「あ、何か落とされました?」

由紀子「落としたかどうかはわからないんですけど、

 もしかしたら何か落としたかもしれないので…」

大西「あ、それでいつも落とし物箱を確認しているんですか?」

由紀子「はい、変ですか?」

大西「いえ、そんなことはないと思います。

 あ、そうだ。このハンカチ今朝届けられたんです。落とされてませんか?」

由紀子「ハンカチ…ちょっと見てもいいですか?」

大西「はい、どうぞ」

   由紀子がマンモスのハンカチを広げる。

   壁画のようなマンモスに圧倒される由紀子。

由紀子「なんというか…不思議なハンカチですね」

大西「そうですね。ちょっと不思議です」

由紀子「(少し笑って)この持ち主どんな方なんでしょうね」

大西「僕も気になります。というかこの落とし物箱に入ってる落とし物の

 持ち主全員がどんな方なのか気になるんです」

由紀子「(目を輝かせて)私もそう思います。

 だから小学校の時はずっと落とし物係だったんです」

大西「あ、僕もです。だからこの駅にも作ってみたんですよ。

 あんまり成果はないですけどね」

由紀子「あの…私でよければお手伝いします。何でも言って下さい!」

大西「え?いえ、あの…」

由紀子「私、本田って言います。明日またお話しましょう。ではまた!」

大西「(思わず)あ、はい!」

   由紀子、足早に出て行く。

大西「お話ししましょう…?」

 

○同・待合室(朝)

   小林がストーブにあたっている。

   隅にある椅子には狭山明(41)が座って本を読んでいる。

   大西が改札口で待機している。柴田が改札口をぞうきんで拭いている。

柴田「へぇ、そんな事がねえ」

大西「どう思います?」

小林「(大声で)そりゃあ大西君の事が好きに決まってる!」

   びっくりして顔をあげる狭山。

大西「ちょ、なんでそうなるんですか!しかもそんな大声で…」

柴田「つか、なんで聞こえるんだよ!」

小林「わしは福耳なんじゃ!」

柴田「…今関係ないだろそれ…」

   小林が落とし物箱からマンモスのハンカチを取り出して広げる。

小林「このワイルドなハンカチが大西君の恋のキューピットになるとは…」

   と、狭山が突然立ち上がる。

狭山「そのハンカチの持ち主は誰ですか?」

大西「…え?」

狭山「私の母の物によく似ています」

柴田「あ、そうでしたか。良かったです。持ち主が現れて…」

狭山「いえ、ですからその持ち主は誰なんですか?」

大西「えっと、どういう事なんでしょう?」

狭山「母とは両親が離婚して以来ずっと会ってないんです。

 今探しているんですが、手がかりがほとんどなくて…」

大西「そうなんですか…でもこのハンカチは落とし物で持ち主がわからないんですよ」

狭山「では落とした場所や拾われた方のお名前をお教え頂けませんか?」

大西「ええっと…(小声で)柴田さんどうしよう。聞くの忘れました」

柴田「(小声で)ええ?やばいだろ」

小林「(狭山に)聞くの忘れたって」

柴田「出たよ、福耳…」

狭山「そう…ですか…」

   小林が入り口を見る。明子が立っている。

小林「あれ、あの人だよ。拾った人!着物の!」

   全員入り口を見る。

明子「(ハンカチを取り出しながら)す、すみません、

 私、自分のハンカチと落とし物を間違えて届けてしまってて…」

柴田「え、じゃあこのマンモスのハンカチの持ち主は…?」

狭山「母さん!」

明子「…明?まあ!こんなに立派になって…」

   狭山、明子の手を握る。

狭山「このハンカチずっと使っててくれたんだね」

明子「使うのがちょっと恥ずかしかったけどね」

狭山「子どもの頃はかっこいいと思ったんだ」

   狭山、明子抱き合う。大西、柴田は呆然としながら見ている。

小林「(大西に)まあ、持ち主が見つかって良かったな。

  しかもあのハンカチのおかげで君に彼女も出来たし」

大西「いや、だからなんで…」

   大西ふと入り口を見る。今度は由紀子が立っている。

由紀子「…彼女?」

大西「あ、あの、いや、小林さんが…」

   大西、由紀子の元へ走り弁解する。小林と柴田がにやにやしながら見ている。

   明子が柴田にハンカチを渡す。

明子「あ、駅員さんごめんなさい。こっちが拾ったハンカチです」

柴田「あ、ありがとうございます。一応お名前と連絡先を教えていただけますか?」

小林「(柴田からハンカチを取り上げて)どれ、本当の落とし物はどんな

 ハンカチなのかな?」
   小林がハンカチを広げる。

   柄はゾウがダンスをしているやはり不思議なハンカチ。

柴田「今度はゾウか…」