もっさりシナリオブログ

もけの脚本・シナリオ等創作置き場(無断転載不可)

進め秒針@時計

人物

早川和人(12)小学生

早川亜紀(44)OL・和人の母

山岡忠志(52)会社員・亜紀の上司

 

 

 

○早川家・和人の部屋(朝)

   ベッドに横になっている早川和人(12)がベッド横のアナログ目覚まし時計を 

   見つめている。時刻は九時八分を指している。

 

○同・リビング(朝)

   早川亜紀(44)が携帯電話で話している。

亜紀「ええ、まだ少し熱があって…もう一日学校を休ませて欲しいんです。

 はい…お手数おかけします。では失礼致します」

   電話を切り、すぐに和人の部屋に向かう亜紀。

 

○同・和人の部屋(朝)

   ピピピという体温計の音がして和人が体温計を取り出す。亜紀が入って来る。

亜紀「どう、やっぱり熱、下がらない?」

和人「うん、三十七度九分あるよ」

亜紀「そう、ごめんね。お父さんもお母さんも仕事で側にいてあげられなくて」

和人「今日は一人でも大丈夫だよ」

亜紀「でもやっぱり心配だな。今からでも上司に頼んで…」

和人「大丈夫だって」

亜紀「そう?六時半には必ず帰ってくるから待っててね」

和人「うん」

亜紀「お昼ご飯はレンジの中に入れたから食べられそうなら食べてね。

 もし食べられないなら冷蔵庫にゼリーが入ってるからそれ食べて」

和人「プリンが良かったな」

亜紀「じゃあ帰りに買ってくるわ。定期的に熱測ってね。

 お昼過ぎに一度電話かけるから」

和人「わかった」

亜紀「じゃあお母さんは会社に行くね。いい子にしてるのよ」

和人「大丈夫だよ。ちゃんと寝てるから」

亜紀「そう、行ってくるね」

和人「いってらっしゃい」

   亜紀、和人の部屋から出る。和人は時計を見る。時刻は九時十三分。

和人「まだ五分しか経ってないじゃん」

   寝返りをうってふと部屋に置いてあるテレビゲーム機を見る。

和人「…ゲームしたいな。でも学校休んでるし、頭も痛いからやめておくか」

   和人ゆっくり目を閉じる。

 

○(夢)同・和人の部屋

   和人がゲームをしている。画面にはゾンビを撃って殺すプレイヤーとどんどん倒

   れていくゾンビ達が映っている。ふと電気が消えて真っ暗になるが、すぐに電気

   がつく。すると部屋中にゾンビが立っていて和人を襲おうとする。

   絶叫する和人。

 

○同・和人の部屋(朝)

   目を覚ます和人。汗びっしょりになっている。

和人「夢…か…」

   時計を見ると九時三十二分になっている。

和人「まだ九時半か…早く六時半にならないかな」

   和人布団をかぶる。

 

○赤丸商事・オフィス
   亜紀がパソコンに向かい、プレゼンテーションの資料を作成している。

亜紀「和人、大丈夫かな…」

   安紀、時計を見る。時刻は十一時五十七分になっている。

 

○早川家・リビング

   和人がレンジの中を見ている。えびドリアが中に入っている。和人、頭を

   かきむしってから冷蔵庫の方に行き、みかんゼリーを手に取る。

 

○赤丸商事・オフィス

   亜紀が机の前で携帯電話を手に家に電話しようとしている。

   そこへ山岡忠志(52)がやってくる。

山岡「早川さん、資料出来ましたか?」

亜紀「あ、はい」

山岡「出来ればちょっとだけ打ち合わせたいんですが、大丈夫ですか?」

亜紀「はい。大丈夫、です」

   ちらりと時計を見る安紀。時刻は十二時三十八分になっている。

 

○早川家・和人の部屋

   空になったゼリーの容器が机の上に置いてある。和人は布団をかぶって

   時計を見ている。時刻は十二時四十三分。

和人「まだお昼か。さっきから秒針全然進まない気がする」

   和人寝返りをうつ。

和人「お母さん、お昼過ぎに電話するって言ってたけどお昼過ぎって何時くらいなん

 だろ」

   和人ゆっくり目を閉じてまた開ける。時計を見る。

   時刻は十二時四十五分。

和人「(ため息)二分しか経ってないし」

   和人目を閉じる。

 

○(夢)小学校・教室

   クラスメイトのユウナちゃんとプリンを食べている。

   するとクラスメイトのイシザカ君が和人を突き飛ばす。

   びっくりした表情の和人。

 

○(夢)同・廊下

   気がつくと廊下に立っている和人。イシザカ君がすごい形相で和人に迫ってく

   る。長い廊下を走って逃げる和人。ふと後ろを見ると追ってきているのは

   イシザカ君ではなく大きな黒い犬になっている。追いつかれそうになる和人。

 

○同・和人の部屋

   目を覚ます和人。またしても汗びっしょりになっている。

和人「また夢か。嫌な夢だったなあ」

   時計を確認する和人。十四時一分になっている。

和人「なんだか知らない間に時間が経ってる」

 

○赤丸商事・オフィス

   亜紀が机の前で片方で携帯電話を持ち、

   もう片方でおにぎりを持っている。

亜紀「打ち合わせ、ちょっとって言ってたのに」

   亜紀、時計を見る。時刻は十五時十二分。家に電話する亜紀。

 

○早川家・和人の部屋

   電話が鳴っている事に気がつき、早足でリビングに向かう和人。

 

○同・リビング

   和人が電話の受話器を取る。

和人「もしもし」

亜紀の声「もしもし和人?お母さんだよ。どう?調子は?」

和人「うん、大丈夫だと思う」

 

○赤丸商事・オフィス

   亜紀が携帯電話を持ち替える。

亜紀「熱測った?」

和人の声「あ、測るの忘れてた」

亜紀「ええー後でちゃんと測ってね。ご飯は食べられた?」

和人の声「みかんゼリー食べたよ」

亜紀「じゃあえびドリアは食べられなかったんだ」

和人の声「風邪の時にえびドリアは食べられないよ」

亜紀「言われてみれば…確かに。夜おかゆ作るね。それなら食べられるでしょ」

和人の声「多分」

亜紀「そろそろ電話切るね。熱測っておくのよ。じゃあね」

和人の声「うん。早く帰って来てね」

 

○早川家・リビング

   和人が受話器を置き、部屋に戻る。

 

○同・和人の部屋

   体温計を取り出し、脇に挟む和人。時計を見ると十五時三十分。

和人「あと三時間くらいか」

   和人目を閉じる。

 

○同・和人の部屋(夜)

   目を開けると亜紀が和人の額に手を乗せている。

 

亜紀「あ、起きた。少しだけ早く帰ってこれたよ」

   和人時計を見る。十七時四十一分。

和人「お、おかえりなさい。あれ?…夢見なかったな」

亜紀「さっきは夢見たの?風邪の時って変な夢見るよね。

 そうだ、約束のプリン買ってきた。食べる?」

和人「うん」

   和人プリンを受け取る。

亜紀「熱もう一回測った方がいいね」

   亜紀が体温計を渡し、和人脇に挟む。

和人「今日一日長かったような気がしたけど終わってみると

 そんなに長くなかったな」

亜紀「時間ってそんなもんだと思うな」

   ピピピと体温計の音がする。和人、亜紀に体温計を見せる。

亜紀「熱下がったみたい。良かった。おかゆ作るね」

   亜紀にっこり笑う。